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音源のすぐそばに置かれたカード型の録音機へ、短い距離で音の波がまっすぐ届き、その先にあらかじめ差し込まれたタイルを通って、右側の文字の行が揃って出力される様子。揃った行のなかに琥珀色の印が2つだけ残っている

文字起こしの精度を上げる2つの方法|きれいに録る、固有名詞は先に登録する

公開: 2026年8月1日

目次
  1. 1. 方法は2つ、チェックは2か所
  2. 2. 方法1はきれいに録る
  3. 3. 方法2は固有名詞を先に登録する
    1. 同じ音源で、登録あり・なしを比べた
  4. 4. 長い録音は分けて出す
  5. 5. チェック1は日常語
  6. 6. チェック2は要約
    1. 残った誤りが、次の仕事になった
  7. 7. やっても効かないこと
  8. 8. 効いたかどうかを確かめる
  9. まとめ

文字起こしの精度を上げる方法は2つ。

はっきりきれいに録音して、間違いやすい名詞は先に登録しておく。この2つです。

きれいに録るのは費用ゼロ。効果もいちばん大きい。固有名詞の登録は初回だけ10分かかりますが、登録した語は実際に直りました。

ただし、誤りがゼロになるわけではありません。残るのは日常語AIの要約。「施策」が「政策」になる誤りは登録しても消えず、それが要約では実在の言葉として扱われ、そのまま作業項目になりました。

確かめたのは、正解が文字でわかっている81秒の読み上げ音源とPLAUDの「カスタム用語」機能。同じ音源を、登録した状態としていない状態で2回かけました。録り直していないので、変わったのは設定だけです。

モジオコLab 編集部 / 筆者

音声入力や文字起こしAI、そして文字起こしを要約してくれるAIを使い倒したら、日々の業務がめっちゃ楽になった人間です。 その手応えから、実際に自腹でいろんなデバイスを使い始めています。 音声入力は Aqua Voice を日常的に愛用し、議事録要約の NotebookLM は仕事でもプライベートでも1年以上活用中。 個人情報を扱う仕事柄、セキュリティや運営元の素性は人一倍シビアにチェックします。

1. 方法は2つ、チェックは2か所

やることを整理すると、こうなります。前半2つが誤りを減らす方法、後半2つが残りを見つけるチェックです。

何をするか手間費用
方法1録音するものを口元に近づける数秒なし
方法2よく出る固有名詞・略語を先に登録する初回10分機能による
チェック1日常語の誤りを見る数分なし
チェック2AI要約を鵜呑みにしない習慣なし

なぜこの2つが効くのかは、精度が何で決まるかを整理した文字起こし精度を比較検証にまとめました。要点だけ書くと、精度は録り方・エンジンの語彙・読むテキストの3つで決まり、手元で変えられるのは録り方と語彙だからです。

精度を上げる2つの方法と、2か所のチェックを並べた図。方法1はきれいに録ることで費用ゼロ、効果が最大。方法2は固有名詞を先に登録することで登録した語に効く。ここまでが誤りを減らす方法。チェック1は日常語で、施策が政策になる誤りは登録しても残る。チェック2はAIの要約で、残った誤りが作業項目になる
前半2つで誤りを減らし、後半2か所で残りを見つける

まず方法1だけ、次の打ち合わせで試してみてください。

2. 方法1はきれいに録る

最初にやるべきは、録音するものを手元に置くことです。費用がかからず、効果がいちばん大きい。

同じ5時間の音源を複数の経路にかけた検証では、マイクに近いクリアな声なら、どの経路でも文意が一致しました。差が出たのは次の3つの場面だけです。

  1. 距離のある声。会議室の反対側、机の端に置いた録音機
  2. 複数人が重なる会話
  3. スピーカーから流れる音声。動画やオンライン会議の相手側の声

つまり精度の話の大半は、距離の話に置き換えられます。会議のたびに録音機を机の真ん中へ押しやっているなら、そこを変えるだけで直す手間が減ります。

場面ごとの置き方はこうです。

ここで「専用の録音機のほうがマイクが良いのでは」と考えたくなりますが、そうではありません。同じ音を同時に録った専用機どうしで、録音品質に決定的な差はありませんでした。効いているのは性能ではなく、口元に近い位置に常にあるかどうかです。

次の打ち合わせで、録音するものを机の端でなく手元に置いてみてください。それだけで結果が変わります。

3. 方法2は固有名詞を先に登録する

いつも同じ社名だけ間違う。毎回おなじ略語を直している。それはなぜ直らないのか、という話です。

理由は、誤変換が壊れた文字にならないからです。別の実在する語に化けるので、AIも人も引っかかりません。実際、正解のわかっている台本を読み上げたクリーンな録音でも、こう出ました。

言った言葉出てきた言葉
SaaSSARS(重症急性呼吸器症候群)
ROIRoe
PoCCOP
MTGMDG

4つとも実在する語です。だから読み流せてしまう。

ここに効くのが、使う語を先に登録しておく方法です。PLAUDには「カスタム用語」という設定があり、よく使う氏名・会社名・業界用語をあらかじめ登録できます。設定画面のトグルひとつでオンとオフを切り替えられるので、効果をそのまま比べられました。

同じ音源で、登録あり・なしを比べた

81秒の同じファイルを2回アップロードしました。1回目は SaaS・ROI・PoC の3語を登録した状態。2回目は機能をオフにした状態です。録り直していないので、変わったのは設定だけです。

言った言葉登録なし登録あり
SaaSSARSSaaS
ROIRoeROI
PoCCOPPoC
MTGMDGMTG

登録した3語は、すべて正しく出ました。オフに戻すと、以前の検証と同じ誤りがそのまま再現しています。エンジンが更新されて勝手に直ったのではなく、登録が効いたと判断できます。

同じ音源を用語登録あり・なしで比較した図。登録なしではSaaSがSARS、ROIがRoe、PoCがCOP、MTGがMDGに化けるが、登録ありでは4語とも正しく出る。一方で施策が政策になる誤りは両方に残る
同じ81秒の音源。変えたのは設定だけ

ひとつ想定と違ったのは MTG です。登録していないのに直っていました。登録と同時に業界の分野も指定していたため、どちらが効いたのかは切り分けられていません。登録語以外にも改善が出ることがある、という事実だけ書いておきます。

登録は続ける価値があります。自分の会社名、取引先名、よく出る略語を10個ほど入れておけば、その語はもう直さずに済む。初回に10分かけるだけで、以降ずっと効きます。

毎週おなじ固有名詞を手で直しているなら、登録は一度で済む作業です。

PLAUD Note を公式サイトで見る

設定のカスタム用語で、氏名・社名・業界用語を先に登録できる

まず自分の会社名と、よく出る略語を10個だけ登録してみてください。次の録音から結果が変わります。

4. 長い録音は分けて出す

ここまでの2つとは別の軸の話を、ひとつ挟みます。「精度が悪い」と感じたとき、原因が精度ではないことがあるからです。そもそも最後まで聞いていない場合です。

同じ台本を繰り返しただけの音声を作り、「同じ内容が何回繰り返されていますか」と聞いて確かめました。中身が同じ繰り返しなので、回数が合えば全部読めた証拠になります。

音声の長さ回答正解
10分4回3.6回
30分5回10.8回
60分10〜15回21.5回
120分読み込み失敗43回

問題は60分です。エラーは出ません。それでも半分近くを落としたまま、平然と要約を返します。

そしてこの壁は課金では越えられません。有料にしても結果は同じでした。一方、同じ無料のまま処理するモデルを変えたときは、30分の回答が5回から10回に改善しています。詳しい数字はGeminiの文字起こしにまとめました。

長い録音は、はじめから2つに分けて出してください。1時間の研修なら30分ずつ。それだけで取りこぼしが防げます。

5. チェック1は日常語

ここからが、減らしきれなかった誤りを見つける話です。1か所目は日常語。

先ほどの2回の出力を並べると、登録した4語以外は1文字も違いませんでした。つまり、次の誤りは登録しても消えません。

言った言葉出てきた言葉
施策としては政策としては
今期のKGI今回のKGI
下げる方向です下げる方法です
インプレッション単価インプレーション単価
ASAPで意思決定しましょうASAPを意識しましょう。意思決定しましょう。

「施策」が「政策」になるのは厄介です。どちらも実在して、会議の文脈で成立します。読んでも引っかかりません。

最後の1行はさらに厄介で、言っていない一文が生まれています。「ASAPで意思決定しましょう」が、「ASAPを意識しましょう。意思決定しましょう。」という2つの文になりました。話者が言っていない指示が、読める日本語として増えています。

辞書が守るのは、登録した語だけです。周りの日常語は守りません。

見るべきところは決まっています。決定事項、期限、担当者。この3つが書かれた文だけ、声と突き合わせてください。全文を読み直すより速く終わります。

6. チェック2は要約

2か所目は、AIが作る要約です。ここが今回いちばん驚いた部分でした。

登録なしの回で、生の文字起こしとAI要約を並べてみます。

言った言葉生の文字起こしAI要約
SaaSSARSSaaSに直った
PoCCOPPoCに直った
インプレッションインプレーションインプレッションに直った
施策政策施策に直った
ROIRoeRoeのまま
MTGMDGMDGのまま

要約はよく働いています。4つは直りました。「病名がマーケティングの会議に出るのはおかしい」という文脈判断が効いています。

直らなかったのは Roe と MDG。どちらも、その会議に出てきてもおかしくない見た目だからです。要約が直せるのは、文脈的にありえない誤りだけ。ありえる誤りは、整った文章のまま残ります。

残った誤りが、次の仕事になった

AI要約には「AIからの提案」という欄があり、会議で決まっていない論点を挙げてくれます。そこにこう出ました。

Roeの定義と測定方法が不明確。財務/マーケ指標のどちらを指すかを統一し、算出式を明文化する必要があります。

誤変換で生まれた「Roe」を、AIが実在の指標として受け取っています。そのうえで「定義を統一し、算出式を明文化すべきだ」という、もっともらしい宿題を作りました。次の作業リストにも「次回MDGで担当別進捗の持ち寄り」が並んでいます。

つまり誤りは訂正されないどころか、誤りを土台にした作業項目が生まれます。この議事録を会議に出ていない人が読んだら、Roeの定義を調べる仕事が実際に発生します。

要約が使えないという話ではありません。速くて有用です。ただし確認する場所が決まっています。

  1. 要約で全体を速く読む
  2. 数字・指標・金額・人名・固有名詞だけ、生の文字起こしか元の音声で確かめる
  3. 人に配る前に、その場にいた人が一度読む

内容を知らない人には、整った誤情報を見つける手段がありません。配る前に1回だけ挟んでください。

今日から、直すのは数字と固有名詞だけと決めてしまいましょう。全文を読み直すより速く、見落としも減ります。

7. やっても効かないこと

時間と費用の節約のために、効かなかったものも書いておきます。すべて自分の実測が根拠です。

  • 高いツールに乗り換える … クリアな声なら経路の差はほとんど出ません。乗り換えても同じ誤りが残ります
  • 音量を上げる、大きな声で話す … 崩れるのは距離と声の重なりであって、音量ではありませんでした
  • スピーカー越しに録る … 専用機2種の共通の弱点です。オンライン会議は相手の音を空気越しに拾わず、端末側で録ってください
  • AIに「正確に書き起こして」と頼む … AIは正解の音声を知りません。判定できるのは、もっともらしさだけです
  • 要約だけ読んで確認を済ませる … 直らなかった誤りが、作業項目になって出てきます

マイクを買い足すことについては、まだ実機で確かめていないため、効く・効かないのどちらも書けません。確かめられているのは距離までです。

8. 効いたかどうかを確かめる

ここまでの数字は、私の音源での結果です。同じ結果になる保証はありません。測れるのは、自分の音源だけです。

いちばん簡単な確かめ方は、自分の業界の略語を10個入れた短い台本を読み上げて録ることです。

  1. 自分の会社名・取引先名・よく使う略語を10個入れた台本を書く
  2. 普段の距離、普段の場所で読み上げて録音する
  3. 出てきたテキストと台本を、1語ずつ自分の目で比べる

比べる作業をAIに任せないでください。AIは正解の音声を知らないので、読みやすい出力を正確だと判定します。

同じ音源を使えば、登録の前後も比べられます。今回私がやったのも、これと同じことです。より詳しい測り方は文字起こし精度を比較検証の§6にまとめました。

会議録を直すのに毎週30分かけているなら、その時間のほうが道具代より高くついています。

Notta を公式サイトで見る

こちらにも単語登録があり、読みと表記をセットで指定する形

Nottaの単語登録は読みと表記をセットで登録する作りで、PLAUDのカスタム用語は表記だけを登録します。今回実際に試したのはPLAUDのほうです。

まとめ

  • 精度を上げる方法は2つ。きれいに録ることと、固有名詞を先に登録すること
  • きれいに録るのがいちばん効く。費用ゼロで、精度の話の大半が距離の話に置き換わる
  • 登録した語は直った。同じ音源でオフに戻すと、以前と同じ誤りが再現した
  • チェック1は日常語。辞書が守るのは登録した語だけで、「施策」が「政策」になる誤りは残る
  • チェック2は要約。文脈的にありえない誤りだけが直り、残ったものは実在の言葉として扱われ、作業項目になった
  • だから登録はやる価値がある。危ないのは、登録したから安心だと思って要約だけ読むこと

まず自分の会社名と略語を10個登録して、次の1本で試してみてください。初回の10分で、以降ずっと直さずに済みます。

よくある質問

用語を登録すれば、専門用語の誤変換はなくなりますか?

登録した語は直りましたが、それ以外は直りません。同じ音源を登録あり・なしで比べたところ、登録したSaaS・ROI・PoCはすべて正しく出た一方で、登録していない日常語の誤りは両方に同じだけ残りました。「施策」が「政策」に、「今期」が「今回」になる種類の誤りです。辞書は登録した語だけを守るものと考えてください。

AI要約だけ読んで確認を済ませても大丈夫ですか?

危険です。要約は誤りの一部を直しますが、直らなかった誤りは実在の言葉として扱われます。今回の検証では、ROIがRoeと誤変換されたまま要約に残り、AIの提案欄に「Roeの定義と測定方法が不明確。算出式を明文化する必要があります」という作業項目まで生成されました。誤変換が、そのまま次の仕事に変わっています。

精度を上げるのに、いちばん効くのは何ですか?

録音するものを口元に近づけることです。手間がかからず、費用もかからず、効果がもっとも大きい方法です。同じ音源を複数の経路で比べた検証では、マイクに近いクリアな声であればどの経路でも文意が一致しました。差が出るのは、距離のある声・複数人の重なり・スピーカーから流れる音声の3つの場面だけです。

長い録音で内容が薄くなるのは精度の問題ですか?

精度ではなく、最後まで読めていない可能性があります。同じ台本を繰り返した音声で試したところ、60分の音声はエラーを出さないまま半分近くを落としました。しかもこれは有料にしても変わりません。長い録音は、はじめから分けて出すほうが確実です。

マイクを買えば精度は上がりますか?

私はまだ実機で確かめていないので、断定できません。確かめられているのは距離までです。同じ音を同時に録った専用機どうしでは録音品質に大きな差はなく、効いていたのは性能ではなく口元に近い位置に置けるかどうかでした。買い足す前に、いまの機器を手元に置く形から試すことをおすすめします。